『スピラレ スキップト』

一回飛ばしの批評です。 2013年、渋谷にある映画美学校にて開講された「批評家養成ギブス第二期(主宰:佐々木敦)」の修了生有志による、批評同人誌『スピラレ』のWEBサービスw http://spirale.hatenablog.com/ twitter@spira_le

2016-01-01から1年間の記事一覧

【連作批評】「障害者と旅する」第十八回 textたくにゃん

ゲンロン批評再生塾第二期「道場破り」(第一回) 「いま、ここ」から「いま、そこ」へ 上北千明の「擬日常論」は、連載中の漫画2作品という最先端カルチャーを主な材料に、柳田國男から東浩紀までの近現代思想というスパイスをふんだんにまぶしながら、課…

【連作批評】「障害者と旅する」第十七回 textたくにゃん

写真における作為/作意(3) トゥオンブリーの描画技法にみる「越境性」 ドキュメンタリー映画『ぼくは写真で世界とつながる』(マザーバード、二〇一四年)の主人公で自閉症(+中度の知的障害)のアマチュアカメラマン、米田裕二(以下、裕二君)の写真…

【連作批評】「障害者と旅する」第十六回 textたくにゃん

生の芸術を廻って(7) 『子どもたちは未来のように笑う』にみるワークインプログレスという名の胎児 演劇には、本公演とは別に、プレ公演やリーディング公演、公開稽古というものがある。それらは、演劇好きの人にとっては面白く、また、金銭的にも安く観…

【連作批評】「障害者と旅する」第十五回 textたくにゃん

「障害者」と「健常者」の現在進行形(2) 親元と喉元を離れた音楽は手元へ――『LISTEN リッスン』評 聾者と健聴者が共に生きるこの世界において、音楽は一体どこへ向かうのか。昨年日本でも公開されたフランス映画『エール』は示唆的だ。主人公の高校一年生…

【連作批評】「障害者と旅する」第十四回 textたくにゃん

生の芸術を廻って(6) 『思い出し未来』にみる「おわり」と抗う「今日」 演劇において、あるシーンを反復する演出をリフレインと呼ぶ。昨今では、ままごとやマームとジプシーといった劇団の作品の中で頻出することによって、技法として確立されているよう…

【連作批評】「障害者と旅する」第十三回 textたくにゃん

生の芸術を廻って(5) 『思い出し未来』にみる反復的な終演の技法 前回の最後で、「生(き)の芸術」のはじまりを、引き続き『SELF AND OTHERS』にみていくと述べた。しかしながら残念なことに、恐らく今後『SELF AND OTHERS』へ本論の軸足を戻すことはな…

【連作批評】「障害者と旅する」第十二回 textたくにゃん

生の芸術を廻って(4) 『SELF AND OTHERS』にみる生(き)の芸術の「はじまり」 演劇の、その舞台の始まり方は多様である。例えば、開演に先立つ注意事項を観客の前でアナウンスする人物が、そのまま演技を始めることでシームレスに舞台が始まるケースがあ…

【連作批評】「障害者と旅する」第十一回 textたくにゃん

生の芸術を廻って(3) 「アール・ブリュット」の未来 ここまで、二つの記録映像を通して、「アール・ブリュット」の現在と過去、すなわち、現状と課題について考察してきた。それは端的にいえば、「アール・ブリュット」という言葉が本来の意味から遠く離…

【連作批評】「障害者と旅する」第十回 textたくにゃん

生の芸術を廻って(2) 「アール・ブリュット」の過去 前回に引き続き、二〇一六年一月二十四日(日)行われた、「障害のある方の創作風景とその日常に学ぶ 創作記録映画 上映会~生きること は 創ること~」というイベントから、「生(き)の芸術」につい…

【連作批評】「障害者と旅する」第九回 textたくにゃん

生の芸術を廻って(1) 「アール・ブリュット」の現在 正式な美術教育を受けていない作家による芸術作品のことを、「アウトサイダー・アート」と呼ぶ。美術評論家の椹木野衣は、昨年著した新書『アウトサイダー・アート入門』の中で、アウトサイダー・アー…

【連作批評】「障害者と旅する」第八回 textたくにゃん

写真における作為/作意(2) 映画『カメラになった男』にみる自意識の解体と再生 今から二ヶ月前に公開した本連載の第一回において私は、自閉症(+知的障害)を持つアマチュアカメラマンの青年・米田裕二(以下、裕二くん)の写真を批評対象とし、彼の撮…

【連作批評】「障害者と旅する」第七回 textたくにゃん

「障害者」と「健常者」の現在進行形(1) 映画『DOGLEGS』にみる現代人における強迫観念 「障害者」、そして、「健常者」にとって、現代とはどのような時代なのだろうか。それは、今この時を世界でも有数の大都市・東京で生きる、人の心が端的に映し出して…

【連作批評】「障害者と旅する」第六回 textたくにゃん

一流野球選手の身体の転回に観る全身まひ者(5) 「大きな丸い物」と「噴き出す水」 劇団「態変」の旗揚げ公演から、『水は天からちりぬるを』公演までの間には、四年弱の月日が流れている。その間、筋ジストロフィーを持つK君という団員の死があり、彼の…